障害者に対する意識の問題
■ 根拠法上の理念
障害者基本法
同法では、
- 差別の禁止
- 社会参加の機会確保
- 共生社会の実現
が理念として掲げられている。
つまり制度理念上は「尊厳と共生」が前提。
■ 国民意識調査
内閣府「障害者に関する世論調査」では、
- 障害者に対する理解が「十分に進んでいる」と回答する割合は限定的
- 精神障害に対する距離感・不安感を示す回答が一定数存在
特に:
- 「一緒に働くことへの不安」
- 「近隣に住むことへの抵抗感」
といった設問で、身体障害より精神障害のほうが心理的距離が大きい傾向が示されている。
■ 行政・職員側の研修実施状況
多くの自治体では:
- 障害者差別解消法に基づく職員研修を実施
- 相談窓口設置
しかし、
- 研修頻度
- 内容の専門性
- 精神障害特化型研修の実施状況
には自治体差がある。
■ 差別解消法の構造との関係
障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律
同法は:
- 不当な差別的取扱いの禁止
- 合理的配慮の提供義務
を規定するが、
実効性は
- 申出
- 個別対応
- 行政指導中心
で構成されている。
つまり、
制度は整備されているが意識・理解の深化までは法的に強制できない。
■ 構造整理
| 表向き | 実態 |
|---|---|
| 共生社会 | 理念規定中心 |
| 差別禁止 | 申出ベース |
| 理解促進 | 研修・啓発依存 |
| 多様性尊重 | 精神障害は距離感が残存 |
■ 補足データ
- 精神障害者手帳所持者数の推移(増加傾向)
- 発達障害診断数の増加
- 障害者雇用率達成企業割合
Ⅰ.民間企業の障害者雇用状況(2025年6月1日時点)
- 雇用障害者数:約70.5万人(22年連続で過去最高を更新)
- 前年比 約2.7万人増(+4.0%)
- 実雇用率:2.41%
- 前年(2.41%)と同水準。雇用者数は増えているものの、分母となる企業の常用労働者数も増加しているため、比率は横ばい。
- 法定雇用率達成企業の割合:46.0%
- 半数以上の企業(54.0%)が未達成。
- 未達成企業(約6.5万社)のうち、57.3%は「障害者を1人も雇用していない」企業。
Ⅱ.2026年「2.7%」への引き上げと影響
法定雇用率は段階的に引き上げられており、2026年に大きな節目を迎える。
- 2024年4月〜:2.5%(現在)
- 対象:従業員 40.0人以上 の企業
- 2026年7月〜:2.7%(次期引き上げ)
- 対象:従業員 37.5人以上 の企業
ポイント: 基準が「37.5人」に下がることで、これまで雇用義務のなかった中小企業が新たに義務の対象となり、人材獲得競争がさらに激化することが予想される。
Ⅲ.障害種別ごとの雇用者数推移(民間企業)
精神障害者の雇用が急増しており、企業の受け入れ先が変化している。
| 障害種別 | 雇用人数 | 前年比 | 備考 |
| 身体障害 | 約37.4万人 | +1.3% | 高齢化による退職等で伸びは緩やか |
| 知的障害 | 約16.2万人 | +2.8% | 安定した職域確保が進む |
| 精神障害 | 約16.9万人 | +11.8% | 全種別で最大の伸び率。 知的障害を抜いて2番目に。 |
データから見える課題:
雇用数自体は伸びているが、実雇用率が伸び悩んでいるのは、「法定雇用率の引き上げスピードに、企業の採用・定着支援が追いついていない」ことを示しています。特に未達成企業の半数以上が「雇用者ゼロ」である点は、中小企業における採用ノウハウの欠如を物語っている。
法制度上は差別禁止と理解促進が掲げられているが、意識変容は主として啓発・研修に委ねられている。
精神障害に対する心理的距離は依然として課題とされている。

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